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News Lettter スポットワーク導入で押さえるべき労務管理の要点

今回のトピック

スポットワーク導入で押さえるべき労務管理の要点

1.“応募=契約成立”?! スポットワークで知っておくべき労働契約の基本
2.“短期だから大丈夫”は通用しない!社保・労災・安全配慮の注意点
3.賃金・勤怠・欠勤…スポットワークで起きやすいトラブルとその対処法
4.仲介業者が賃金を支払っても大丈夫?“立替払い”の法的ポイント

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1.“応募=契約成立”?! スポットワークで知っておくべき労働契約の基本
近年、アプリなどを通じて短時間・単発で働く「スポットワーク(隙間バイト)」
が急速に普及しています。企業にとっては繁忙期や人員不足時に即戦力を確保で
きる便利な仕組みですが、短期でも労働関係法令の適用を免れることはできません。

 

導入にあたっては、法的責任の所在や労務管理上の留意点を理解し、トラブルを
未然に防ぐ体制を整えることが重要です。

 

まず、労働契約の成立について確認しておきましょう。
スポットワークでは、事業主とスポットワーカーが直接労働契約を
結ぶため、労働基準法等を遵守する義務は事業主に生じます。スポットワーカーと
仲介事業者が労働契約を結ぶものではありません。労働契約は、労働者が事業主に
使用されて労働し、事業主がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者およ
び事業主が合意することによって成立します。
スポットワークでは、アプリを通じて事業主が掲載した求人にスポットワーカー
が応募し、面接などを経ず短時間でマッチングすることが一般的です。
先着順で就労が決まる場合、特段の合意がなけ
れば、事業主が掲載した求人にスポットワーカーが応募した時点で、労使双方の
合意があったものとして労働契約が成立すると一般的に考えられます。
労働契約成立後、事業主は労働基準法第15条に基づき、
労働条件を書面などで明示する義務があります。
労働条件を明示しなかった場合や、口頭の合意にとどめれば、労働基準法違反となります。
また、短期・単発であっても労働時間規制は当然に適用され、1日8時間、週40時間を超え
れば割増賃金が必要であり、6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間の休憩
を与える義務があります。さらに、労働契約成立後に事業主の都合で業務がなくなった場合は、
労働基準法第26条に基づく休業手当の支払い義務が生じます。
2.“短期だから大丈夫”は通用しない!社保・労災・安全配慮の注意点
雇用保険は週所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある
場合に適用されます。
短期勤務は対象外となることが多いですが、契約更新
の累積や当初から更新予定が示されている場合は、31日以上の雇用と判断
され適用対象となります。
健康保険および厚生年金保険についても、原則と
して2か月以内の有期雇用契約者は適用除外となりますが、更新が明示され
ている場合や実態として継続して勤務している場合は、当初から加入義務が
生じます。
一方、労災保険は雇用期間にかかわらず1日だけの雇用であって
も適用されるため、スポットワーカーが通勤の途中または業務中にケガをし
た場合、スポットワーカーは就労先の保険関係に基づき労災保険給付を受け
ることができます。また、スポットワーカーの労災防止のため、事業主は
労働契約法第5条に基づく安全配慮義務を果たす必要があります。
現場では即戦力として投入されることが多く、十分な教育を行わないまま作業を任せ
る例もありますが、労災事故が起これば企業責任は免れません。
短時間で実施できる教育体制を整え、チェックリストやマニュアル、動画などを活用
して研修を標準化することが望まれます。
3.賃金・勤怠・欠勤…スポットワークで起きやすいトラブルとその対処法
スポットワークで頻発するトラブルの一つが賃金支払いです。割増を考慮せず
日給と称して支払ったり、日払いを約束しながら翌月にまとめて支払うなどの
事例が見られます。
こうした事態を防ぐには、契約段階で賃金形態や支払日、
割増算定方法を明確にし、勤怠管理と給与計算をシステム連動させることが
効果的です。
また、労働時間の記録不備もトラブルの原因です。口頭や紙ベース
の管理では、残業代請求や是正勧告につながりやすく、タイムカードやアプリ
による客観的な記録が望ましいです。
さらに、突発的な欠勤や無断退職も現場を悩ませます。
欠勤時の連絡方法など就業ルールを事前に明確化するとともに、
代替要員の登録や、複数名募集によるリスク分散も有効な手段です。
4. 仲介業者が賃金を支払っても大丈夫?“立替払い”の法的ポイント
スポットワークでは、仲介事業者が事業主に代わって賃金を支払う
「立替払い」方式が一般的に採られています。この場合、労働基準
法第24条の「賃金の直接払いの原則」に反しないかが問題となります。
この点について厚生労働省は、「労働者に賃金が支払われるまで使用者
の賃金支払い義務が消滅せず、所定支払期日に賃金の全額がきちんと
支払われる運用であれば直接払いの原則に違反しない」との見解を示
しています。
したがって、事業主としては、利用する仲介事業者の賃金
支払いシステムが法令に適合し、確実に運用されているか確認すること
が不可欠です。

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※ 上記の情報は令和7年11月現在のものであり、今後変更する可能性がありますので、

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