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News Lettter 賃金請求権の消滅時効期間延長・月60時間を超える時間外労働の割増賃金率について

今回のトピック

1. 賃金請求権の消滅時効期間延長への対応について

① 残業時間の把握、計算方法の誤り
② 固定残業代
③ 管理監督者

2. 中小企業も月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が50%に引き上げられます

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1. 賃金請求権の消滅時効期間延長への対応について

民法の改正に伴い、労働基準法の賃金請求権の消滅時効期間が、2年から3年(当面の間)に改正され、2020年4月1日以降の賃金に適用されています。実際に3年分の賃金請求が可能となるのは、2023年4月1日以後ということになります。逆に言えば、2020年4月1日前に支払日が到来している賃金の消滅時効期間は2年のままです。消滅時効期間延長により、今後トラブルの増加が想定される未払い賃金問題についての点検・確認のポイントは下記の①から③です。

① 残業時間の把握、計算方法の誤り

使用者は、労働者を法定労働時間外・休日・深夜に働かせた場合、割増賃金を支払わなければなりません。そのためには、労働時間を正確に把握し、適正な賃金を支払う必要があります。例えば、日々の労働時間管理について、端数を切り捨てているような企業がありますが、労働時間の切り捨てはできません。また、残業代の計算で算入すべき手当を誤って漏らしていて、未払いが発生しているケースもあります。日々は大した額ではないかもしれませんが、3年分となると多額になることがあります。

② 固定残業代

あらかじめ一定の残業時間を見込んで「固定残業代(定額残業代)」を導入している企業では、見込んだ残業時間を超える残業があったにもかかわらず、超えた分の残業代を支払っていない場合には問題となります。固定残業代を導入する際は、実際に時間外労働がどれくらい発生しているのか状況を調査したうえで、何時間の時間外労働に相当する手当を支払うのか、実態と乖離しないように定め、かつ実際の残業代と固定残業代の差額を支払う仕組みをつくることが大切です。

③ 管理監督者

特に注意したいのは「管理監督者」の取り扱いです。なぜならば、管理監督者が否認された場合の未払い賃金額が多額になるからです。労働基準法上の管理監督者は、労働時間や休日、休憩の規定は適用除外です。したがって、時間外労働や休日労働に係る割増賃金の支払いは不要ですが、深夜労働についての割増賃金は支払う必要があります。また、「名ばかり管理職」という言葉も広く知られるようになり、管理職が必ずしも労働基準法上の「管理監督者」に該当しないことから、裁判で管理監督者であることが否認され、遡って未払い残業代の支払いを命じられるケースがあります。管理職として従事している従業員は、長時間労働となっているケースが非常に多いのも特徴で、基本給も一般従業員に比べて高額であるため、「管理監督者」を否定された場合には、支払額が高額になることも多いでしょう。「管理監督者」に当てはまるかどうかは、役職名ではなく、その労働者の職務内容、責任や権限、勤務態様等を踏まえて、実態から判断する必要があります。

2.中小企業も月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が50%に引き上げられます

2010年4月1日から、月60時間を超えた時間外労働に対しては50%以上の割増賃金を支払うよう法律が改正されました。中小企業に対してはこの引き上げが猶予されていましたが、2023年4月1日からは、月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が25%以上から50%以上に引き上げられますのでご注意ください。開始時期は2023年4月以降の勤怠分からです。末日締め翌月払いの会社の場合、その支払いとしては5月分からとなります。

【追記】
勤怠の締め日が月末でない場合の60H超の残業時間の判定方法

あくまでも2023年4月1日以降の残業時間のみで判定します。

(例)勤怠が15日締めで下記のような残業をした場合
3/16-3/31 残業時間 45H
4/1-4/15 残業時間 45H

総残業時間は90Hになりますが、
60H超の残業時間の残業はあくまでも4/1以降のみで判定するため
この例では60H超の残業時間はないという結論になります。

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